「ユーザー部」との接し方


システムの打ち合わせで顧客と会話するとき、
たまに「null」というキーワードを使って会話をしたくなるときがある。
システム開発者としてはありきたりな単語なのでふとした拍子で使いたくなるのだが、
一般人にはあまり流通していない言葉だと思う。


 


 
打ち合わせの場には得てして顧客の「情報システム部」と「ユーザー部」が出席してくるものだが、
「情報システム部」は少なからずシステム寄りな知識を持っているので
別に「null」を使うことにそれほど強い抵抗はない。
ただ「ユーザー部」はシステムを使ってエンドユーザーにサービスを展開・営業活動をする部隊であり
システム的な理解度に関しては我々のような開発ベンダはおろか自社の情報システム部にも及ばないし、
そもそも「ユーザー部」の業務はそういうところの知識を使うものではない。
そういう人たちに対して「null」という単語を使ってしまうことに対して、客観的に見ると違和感を覚える。
これは自身の体験談からふと思い返すと実際にそう感じたことがある、というのが事の発端である。

意図的かどうかはともかく、しばらく「null」って連呼していると
顧客側もなんとなく”どういうものを「null」って言ってるのか”分かりかけてくるので
気を使って「nullならこういう表示にしてほしい」等と発言してくれるのだが
そもそも「null」のシステム的な意味合いを理解しての発言ではないだろうし
当然ユーザー部に「null」という論理値を理解したうえでの発言をしてほしいとも思っていない。
大体「空白だったら」で事足りるのだから
少なくともユーザー部向けには意訳(?)して「空白だったら」で話せばよいだけなのである。
我々のような開発ベンダ等のSEにはそういう気の使い方が必要なのではと感じる。




でも例えば以下のような外部結合を使ってデータを取得するようなSQLがあって、


select
a.USER_ID
,b.USER_NAME
from TEST_TRN a
,TEST_MASTER b
where a.USER_ID = b.USER_ID(+)


「TEST_TRNにはあるけどTEST_MASTERにはない」ようなデータがあったとき、
当然取得する「b.USER_NAME」はnullになるけれども
これを「nullでいいですか?」なんてユーザー部に質問するのは正直お門違いだと思うのだ。
ロジックの細部のことまでなぜ、しかもユーザー部に質問せにゃならんのだと。
そもそもSQL組んだの自分なんだし顧客に質問すること自体間違ってるだろうと。
⇒実際こういう人に会ったことがあるのだが
※断っておくが俺ではないッ!(笑)




少し話を広げていくと、
実際システム開発の現場でユーザー部と↓みたいなQAのやり取りをしているのを見たことがある
※断っておくがこれも俺ではないッ!(笑)

(ユーザー部)なんで検索にヒットしないのですか? (SE)この画面は○○テーブルの△△がnullではないデータを検索しますが、そのデータは△△がnullになっているためヒットしません。


言ってることはまあわかるんだけど
そういうこと知りたいんじゃねえんだよなあ…って感じであろう。
単にロジックを日本語に略しただけで業務背景などが捉えられていないのだ。
ユーザー部との質疑応答としては正直噛み合っていない。
それはつまりなんなの?
何機能で作られたデータだとそうなるの?
その機能でそういうデータ作るのは仕様通りなの?
…みたいな話を、本来もっと突っ込んでしなければならない。

ただまあ、プロジェクトの方針というかやり方の違いもあるのだが
システムに無知な(理解度が乏しい)ユーザー部から
こういう質問が有象無象に挙がってくる状態をそもそもガードしなければならない、
というのも一つの考え方にあり、
こうした質問を顧客内で”まず吟味して”からベンダ側に投げるような体制が敷かれているのが
プロジェクト推進としてはあるべき姿のようにも思う。
そしてこの「吟味」は情報システム部の役目なのだ。
※ただ残念なことに情報システム部による「吟味」が実現されているプロジェクトに俺は出会ったことがない




一方、「昔は情報システム部にいたけど今はユーザー部」という人が稀にいるが
(どういう理由に寄る人事異動なのかは全くわからないのだが)
こういう人が「ユーザー部側」にいるプロジェクトは大変やりやすい。
システムに理解があるため鋭い突っ込みももらい面食らうこともあるが、
それ以上に「話が早い」からスムーズに事が進む。
「あ~なるほどね~難しいかもね~」みたいなことも早い段階で理解してくれる。
⇒このあたり、説明するためにわざわざポンチ絵書いたり文章で説明起こしたり
 結構体力使うことが多いので、
 その辺が省略されることは大変うれしい限りなのである

勿論こうした人たちばかりではないし、
というかそうした出自の人がいるほうが珍しいから、
そういうした人と仕事ができるようなシーンに遭遇したら「ラッキー」と思うべきだろう。
(ただ上述したように「面食らう」場面もその分多く発生するだろうが)




まあ変に気を使って会話していると全然話が進まないし、
どちらかというと面倒な方向に話が転ぶことが多いから、
冒頭の「null」でいえば別に言うほど気にすることでもない気がするが、
人との会話をするうえでは盲目的になってはいけないなと感じるのである。